レスリー・ベーリングの話



考察を始めるにあたり、筆者のスタンスなどを始めに記しておきます。

筆者が「公式設定」と考えるものは、ゲーム中でのセリフやモノローグです。
書籍には誤謬や著者の個人的な見解が含まれるためです。
サガフロ2には「スクウェア公式設定資料集」が存在しますが、必ずしも同書の記述とここの考察は一致しません。あしからず。

……にも拘らず、「おおまかな設定は書籍を参考にしてくれ」という適当な考察を展開します。
というわけで、レスリーの略歴は攻略本などを読んでください。


1 レスリーの二つの道?

レスリーの人生について。
サガフロ2の設定において、アルティマニアと設定資料集とで異なっている点は多いのですが、中でも差異の大きい人物は彼女でしょう。
一つの違いは去就について。
設定資料集では「ハン・ノヴァに移住して市民として暮らす」
アルティマでは「ケルヴィンの侍女としてハン・ノヴァに伴う」
となっているところです。

二つの全く異なる境遇の中、彼女はどのように暮らしていたのか?
そこのところを考察します。


2 市民のレスリーさん

ハン・ノヴァに移住した場合。

レスリーは設定としては「ベーリング家の長女」ですが、恐らく兄か弟が存在し、ベーリング家の家督はその兄弟が継ぐことになっているのだと思われます。
そのために家を離れ、自由に振る舞うことができるのでしょう。
サンダイルは職業婦人も少なくない世界です。
レスリーも恐らく、ハン・ノヴァで何かしらの職に就いていたのでしょう。

良家の子女が就くべき仕事として、女中(メイド)や家庭教師があります。
女中にも色々とありまして、実家がそれなりの身分であったり富豪だったりすると、料理や洗濯などの雑事には関わらず、来客の対応や夜会に出かける夫人の伴をする女中(パーラーメイドと言う)になったりします。
メイドにもヒエラルキーがあるんですね。
レスリーはお嬢様なので、そうした華やかな仕事のメイドになっていたのかも知れません。
ハン・ノヴァの女中として働いた可能性もあります。


3 侍女のレスリーさん

ケルヴィンの侍女として働く場合、彼女の人生は主人であるケルヴィンに沿う形となります。
ケルヴィンの結婚まではハン・ノヴァで働き、結婚後はヤーデに戻って夫妻とトマス卿に仕えることになります。
ギュスターヴ死亡後暫くして、またハン・ノヴァに戻ります。忙しないですね。

現実としては、男の主人に侍女がつく事はありません。主人につくのは家令、侍女が仕えるのは女主人(家長の妻)です。
まあ現実とは違うので、サンダイルではそういう事もままあるのでしょう。
レスリーはケルヴィンと知己の間柄で、ワイドの一件で共謀していた一幕も見られるので、お互いのことを理解しているのでしょう。レスリーがケルヴィンにつくのは妥当と言えます。
彼女は行儀見習いとしてヤーデに通っていた経験もあるので、伯爵家の事も承知しています。
ギュスターヴとは離れることになりますが、彼女がギュスターヴと浅からぬ関係である(つまり弱みになる)と言う事は周知の事実であったようなので、敢えて彼女をハンから遠ざけ、信頼できるケルヴィンの元へ預けるというのも、考えられなくはありません。

また、マリーの存在もあります。
美しく教養があり、年齢を重ねている(女性に言うことではありませんが)レスリーはマリーの侍女、もしくは女中頭として適任です。
レスリーはケルヴィン・ギュスターヴ両名との古くからの知り合いでもあるので、マリーとの会話も弾むことでしょう。


4 どちらがお好きか

「公式設定」としてのレスリーは市民です。
人口に膾炙したであろう(=より多くの人が読んでいる)攻略本のレスリーは侍女です。
これはもはや好き好きなのではないかと。

このサイトとしては、侍女としてのレスリーを取っています。
ヤーデで過ごし、ケルヴィンやマリーと共に生活を送るレスリーの姿が見たいからです。
要するに筆者の趣味ですね。


5 ギュスターヴとの関係

レスリーとギュスターヴは恋愛関係にあります。
はっきりそうとは明言されていませんが、誰がどうみても明らかでしょう。

資料集にて、「ギュスターヴとレスリーには子供がいたとも噂される」と言った旨がありますが、恐らく子供は存在しないでしょう。
河津氏はレスリーについて「身分差があるので妻にはしてやれないが、愛人という立場にするのも嫌だった」と発言しています。
結び付きは深く、理無い関係ではあったものの、実際に形として何かがあったわけでは無いんでしょう。


6 レスリーの内面

こうして見ると彼女の人生は、好いているギュスターヴのそばにはいられず、時代の流れに振り回されている、と言った印象を受けます。
彼女はどう思っていたんでしょう。

設定資料集にはこんなような記述があります。
「ギュスターヴの中で大きな存在となっているソフィーに、軽い嫉妬を覚えた事もある」
「理想に向けて邁進するギュスターヴの身を案じ、彼を諫めるような一幕もあった」
資料集の記述ではこうですが、筆者は全く逆なのではと思っています。

彼女の内面はあまり描かれていませんが、かなり自然体に生きていた印象です。
ギュスターヴに向けて「あなたの好きなようにすれば」と言った通り、彼女も好きなようにしていたんでしょう。
彼に向けた細やかな情愛も、ソフィー様の代わりとしてのつもりはなく、ただ彼女がそうしたいから、ギュスターヴがそれを欲しがっているような気がするから、と言った所です。
同様に、ギュスターヴに何かを求めたりもしなかったのでしょう。心配はしているものの、彼が自分のままに生き生きと覇業を成し遂げる姿が好きだった筈です。
彼が唯一弱みを見せ、行動の是非を尋ねるのはレスリーその人なのですから、それで十分満足だったのかも知れません。

また、彼女はあまり嫉妬するような性格には見えません。
ケルヴィンとマリーに仕えた場合も、彼らの幸せをそばで見守り、ともに喜んでいた筈です。
夫妻の子に対しても、自分の甥や姪に対するようにかわいがっていたことでしょう。
(実際、レスリーがギュスターヴと結ばれた場合、ケルヴィンの子は甥と姪になる)

好いた人とは結ばれずとも、レスリーは彼女なりの幸せを見つけ、彼女の人生を謳歌していたのでしょう。


おまけ フリンの話

ギュスターヴ母子がヤーデに移住した時、フリンも一緒にヤーデに移住したようです。
その当時、フリンはたったの十二歳です。
彼はヤーデでどうやって生活してたんでしょうか。

可能性としては、以下の仮説が考えられます。
・両親の扶養があった
・自立して一人で生活していた
・ソフィーのお世話になっていた
・トマス卿のお世話になっていた

フリンは両親から蔑ろにされていたので、親からの庇護は望めません。
服すらロクに買ってもらえず、優しくもしてくれなかった両親です。
というわけで、一つ目の選択肢はありえないでしょう。

二つ目の自立は、恐らく不可能でしょう。
ギュスターヴが引っ越した当時、フリンは十二歳のほんの子供です。
十五で大人と見做される世界とは言え、流石にこの年では無理かと。術不能というハンデもあることです。

それでは、ソフィー様のお世話になっていたのか?
それも無いでしょう。
ソフィーは人々の援助を受けて生活している身なので、フリンを養う余裕はないでしょう。
その上、フリンには自分の服装を恥じるセリフがあります。
ソフィー様が面倒を見ているなら、ギュスターヴと同じようにかわいがり、フリンも良い生活をしている筈です。

トマス卿のお世話になっていた場合。
これが最も有りうる話かと。ソフィー様も卿の手助けを受けています。
ただし、そこまでの援助は受けていないものと思われます。
ヤーデ伯が催したパーティで、フリンが見た目のために気後れしている場面がありました。
それに対しギュスターヴは「そんな恰好をしているのはここにいる連中のせい」と、ある種肯定するような反応を見せます。
「気にしなくていい」などで無く、わざわざこうした言い回しをするのは、フリンの格好が確かにみすぼらしいものだったためなのでしょう。
当時の彼の生活レベルはかなり低いものだったではないかと。
だとすれば、誰かのお世話になっていたという可能性はかなり低いのです。
おまけに「優しくしてくれたのはソフィー様だけ」ともあるので、フリンは人からの親切をほとんど受けていない様子です。

しかしながら、ギュスターヴやケルヴィンと親しい彼のことを、ソフィーやトマス卿が放っておくとも考えにくいところです。
親元を勝手に離れた、殆ど孤児同然の存在で、倫理的にも放っておくわけには行きません。
支援の話はあったがフリンの方から断ってしまった、もしくは必要最低限しか受け取らなかった、が妥当かと思われます。


以上です。
文章の都合上、取り上げていない設定もあります。